認知症看護認定看護師|特定看護師|グループホームはまど|前編

認知症看護認定看護師|特定看護師|グループホームはまど|前編

当法人(医療法人松風会)には、認知症看護認定看護師と特定看護師の資格を併せ持つ看護師が在籍、グループホームはまどに着任しています。

グループホームにおける認知症看護認定看護師の役割などについて、グループホームはまど 認知症看護認定看護師・特定行為研修修了者 看護主任 打樋 聡美さんにお聞きします。

 

※認定看護師とは
特定の看護分野(感染管理、緩和ケア、救急看護、認知症看護など21分野)において、熟練した看護技術と知識を有する者として、日本看護協会の認定を受けた看護師です。看護師として通算5年以上の実務経験(うち3年以上は認定看護分野)、日本看護協会が定める600時間以上の認定看護師教育を修了し、審査に合格することで取得できます。(5年ごとに要更新)

認知症看護認定看護師は、「急性期病院から地域までのあらゆる場において、認知症の人に対し、高い臨床推論力と病態判断力に基づいて、認知症の病期に応じた質の高い生活の継続に必要な支援を多職種と協働しながら実践ができる者(日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラムの概要 」より)とされています。

研修には、「認知症の人の尊厳を保持することを基盤に、生活機能を適切に評価し、生活の継続性を重視した支援方法、認知症をきたす様々な疾患・病態に応じた症状緩和ケア技術を習得することで、ケアサービス推進の役割を担えるようなカリキュラム(日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラムの概要 」より)」が組み込まれています。

認知症看護分野の特定行為には 「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」 「精神及び神経症状に係る薬剤投与関連」の2区分があります。特定行為研修を修了した特定行為看護師は、(医師による手順書のもと)患者さんの状態に合わせて実践(特定行為)できるため、迅速な対応をすることが可能です。

 

プロフィールを聞かせてください

打樋 聡美さん(以下略)20歳から3年間、介護士として老健で働いていました。看護師と共に仕事をした3年間で自然と看護師になりたいと思うようになりました。その後、一念発起し、看護学校入学、看護師になりました。

地元の総合病院に勤務後、現在の法人に転職、勤務先は明和苑でした。入職直後に介護支援専門員の試験に合格すると、施設介護支援専門員が不在になったこともあり急遽、施設介護支援専門員となりました。

明和苑で働く中で、認知症看護に興味をもち、認知症看護認定看護師になりました。その後、江藤病院で認知症看護認定看護師として働く中で特定行為研修について興味をもち、特定行為研修修了者となりました。

 

認知症看護認定看護師の一般的な意義・役割について教えてください

認知症看護認定看護師に期待される能力として8項目あり、認知症看護認定看護師の認定証カード裏に記載されています。

 

 1⃣  認知症者の意思を尊重し、権利を擁護することができる

 2⃣  認知症の発症から終末期まで、認知症者の状態像を統合的にアセスメントし、各期に応じたケアの実践、ケア体制づくり、家族のサポートを行うことができる

 3⃣  認知症の行動心理症状を悪化させる要因・誘因に働きかけ、予防・緩和することができる

 4⃣  認知症者にとって安心かつ安全な生活・療養環境を調整することができる

 5⃣  他疾患合併による影響をアセスメントし、治療的援助を含む健康管理を行うことができる

 6⃣  認知症に関わる保健・医療・福祉制度に精通し、地域にある社会資源を活用しながらケアマネジメントできる

 7⃣  認知症看護の実践を通して役割モデルを示し、看護職に対する具体的な指導・相談対応ができる

 8⃣  多職種と協働し、認知症に関わる知識の普及とケアサービス推進の役割を担うことができる

 

私はこれを名札に入れ持ち歩き、定期的に認定証カードを裏返し、実践できているのかと自問自答するようにしています。

現在、日本看護協会に登録されている認知症看護認定看護師は2022年12月現在、2166人です。この多くが病院に所属しています。しかし、地域に目を向けると認知症の人は地域で過ごされている人が数多くいます。今後は病院から出て、地域で活動する認知症看護認定看護師が増えてこなければならないと考えています。

 

明和苑(グループホームはまど)における認知症看護認定看護師の意義や役割について

介護スタッフと共にケア実践をしていくことに意義があると考えています。この中で、みえてくる課題が多いです。

当たり前にいつも同じ方法で実践しているケアが、入居者にとって適したケアであるのかを見直す、気付けくことができる介護スタッフを育成していくことも役割であると考えています。

現場では、介護スタッフと共にケア実践をしていますが、介護スタッフからすると同じケアをしているだけであると思われているのかもしれません。現在はグループホームに所属していますが、入居者の健康管理に注力しています。認知症の人は便秘や痒み、痛みなど身体症状で行動心理症状へ進展することも多いです。

しかし、認知症の人は、これらの症状を言葉で的確に表出できないため、言動や表情やしぐさなどから身体症状を探っていく必要もあり、難しさがあります。

グループホームは在宅です。認知症看護では、自己選択できる環境がホームであるといわれています。好きな場所で過ごし、好きな時に好きな人と会話を楽しみ、好きなお菓子を食べ、認知症症状を意識せずに機嫌よく過ごせられるような環境の調整をしていきたいと考えています。

 

認知症看護認定看護師や特定看護師の活動についてグループホームはまど独自の取り組みはありますか?

認知症ケアが得意で優しい介護スタッフばかりだと誰もが思うグループホームになるように尽力したいと思っています。これを実現していくには、認知症の正しい知識、認知症ケアを学ぶことが必須であると考えています。そのため、山下センター長と連携しながら学ぶ機会を得られるように調整していくことは必要な取り組みであると思っています。

 

「特定看護師」の明和苑(GHはまど)での意義や役割

グループホームでは特定行為の実施する機会は多くはありませんが、特定行為研修での学びは、認知症看護に活用できるものだと考えています。

フィジカルアセスメントや臨床推論の学びは日々のケアの中で活かされます。しかしながら、自己研鑽をしていかないと得た知識は羽をつけて飛んでいってしまっている感覚があるので、自己研鑽に努めていきます。

 

打樋さんが日頃から心がけていることや大切にしていることは?

認知症看護認定看護師に期待される能力のひとつでもある認知症の人の意思を尊重し、権利を擁護することは大切にしていることのひとつです。

また、認知症の人の尊厳の保持を礎としてケア実践に努めています。できていないこともあるので、自分自身に問いながら生きています。

 

認知症看護認定看護師、特定看護師、看護師は、服装などで見分けがつきますか?

当法人では現在、認知症看護認定看護師は看護師のユニホームですが、特定看護師になると青のスクラブと白いズボンのユニホームになります。

もし、認知症看護認定看護師のユニホームを作製してくれるのなら、イメージはオレンジのスクラブです。理由は、国が実施している認知症サポーターの目印でもあるオレンジリングの色だからです。

 

オレンジ色が印象的なリングですね

オレンジを採用した理由についてですが、江戸時代の陶工・酒井田柿右衛門が夕日に映える柿の実の色からインスピレーションを得て作り出した赤絵磁器は、世界的にも名声を誇り、同じく“日本発”の『認知症サポーター』の証として認められればとの思いから作られたそうです。

なお、この温かさを感じさせるこの色は、「手助けします」という意味をもつといわれているようです。

▶  認知症サポーターについての記事はこちら

 

認知症看護認定看護師、特定看護師を併せ持つ看護師が在籍することによってどのようなメリットがありますか?

認知症看護はフィジカルを看る力が大切であるので、行動心理症状の予防や進展した場合でも緩和できるように働きかけることができることは、入所者さんたちにとってのメリットだと思っています。

個人としては、特定行為研修修了者になったことで、認知症看護認定看護師として成長できることが魅力だと思っています。

 

看護師として勤務しながら、介護支援専門員の資格、さらに特定看護師の認定を取得されています。「特定看護師」を取ろうと思ったきっかけは?

近年、認定看護師制度が変わり、特定行為研修が組み込まれた教育に変遷しています。
その影響もあり、認知症看護に関連する特定行為研修を受講したいと考えるようになりました。
また認知症看護はフィジカルを看る力が必要であるので、特定行為研修での学びは認知症看護に活用できると考えました。認知症の人は脱水も認知症状が悪化する要因になり得ます。今後、地域で活動したいと考えていたので栄養・水分管理に関連する薬剤投与関連は学びたいと思っていました。また病院勤務の中で抗精神病薬・抗不安薬についても学びたいと思うようになっていました。

 

「認知症看護認定看護師」を取るためにさらに学ぼうと思ったきっかけ

明和苑での勤務時代、ある入所者さんに出会いました。笑顔の優しい人でした。しかし、日々、認知症症状が悪化していくのです。この時は、認知症看護の知識がなかったので、ただ思うがままに感覚で看護をしていました。なにもできないもどかしさを感じたことが、認知症看護を学ぶきっかけとなりました。

 

勉強熱心ですね!

生きていく中で興味関心をもてるものに出会うことができたことは、私の人生は面白いと思うことがありますが、勉強は得意ではありません。

 

認知症や認知症の方へのサポートについて一般の方やご家族に知っていただきたいこと

認知症ケアについて一般の方やご家族が学ぶ機会はありますか?
国の施策である認知症サポーター養成講座に是非、参加してもらいたいです。そして、認知症の人の応援団になってほしいです。

 

後編では、認知症看護認定看護師になる手順や経験談などをお聞きします。ぜひご覧ください!

 

▶  後編はこちら

▶  特定看護師についての記事はこちら

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